かつて「コミックモーニング パーティー増刊」という漫画誌があり、学生だった頃に読んで圧倒的な感銘を受けた。
 1冊1冊がとてもボリューミーで、誰かの模倣じゃないホンモノの珠玉の作品が並んでいて、田舎者だった私は都市の空気感を漫画から吸収し、未知の世界に畏敬しながら、社会へ踏み出す心構えを養ってきたのだ。


 その後、心の底から喜んで漫画雑誌を読むということはなくなってしまったが、久しぶりに胸がわくわくする雑誌が現われた。それが「食漫」である(笑)。(笑)を付けるというのも甚だ失礼ではあるが、グルメ漫画に特化した雑誌であった。

 正確には「別冊漫画ゴラク」の増刊という位置づけなのであろうか、2009年から2010年にかけ月刊で発行された。全部で20号。

 なんかやっぱり雰囲気が良いんだよね。雑誌自体が若々しく明朗さに満ちている。それは東日本大震災の前、しかも直前だったから、と言ったらこじつけになるだろうか。ハツラツとした気分になったりするんだよね、雑誌を手にしてると。

 全20号があるので、ここでちょっとだけ振り返って、慈しんでみたいと思います。




■ 別冊漫画ゴラク6月号増刊 食漫 vol.1 平成21年6月20日発行

以下Vol.5まで、キャッチフレーズは「B級グルメ探求漫画誌」


 土山しげる『極食キング』
 伝説の食漫画『食キング』の続編である。

 雑誌の冒頭を飾ることが多かった作品。目次において「巻頭カラー」と謳われているが、カラーなのは扉のみ。実在するお店の紹介などにカラーページは割かれることが多かった。


 ラズウェル細木『喰道楽』

 単純に、土山しげるとラズウェル細木の作品があるだけで、雑誌としての威厳が増す。こればかりはどうしようもない。


 中祥人『パスタの王国』

当然だが、全ての作品が第1話である。


 『ビッグ錠のうろうろグルメン』

 料理漫画界の大御所によるエッセイ風作品。考えてみりゃ、土山しげる、ラズウェル細木、ビッグ錠って、信じられないくらい豪華な布陣である。


 榊美鈴『絶品!名古屋メシ』 ~ラーメン編~

名古屋メシに特化した連載。ネタ切れにならないのかと思いきや、続く続く。


 ブロン園田『レトルト革命』

 このような、料理・調理のアイデアのみを描いたミニコーナー的漫画も大変充実していた。


 これもそう。仲居ゆかり『簡単!電子レンジ料理』

こちらの方が実用性は高いように思う。


 井上いちろう『駅弁特急』 

 これぞ、雑誌「食漫」の最高傑作の一つ!『烈車戦隊トッキュウジャー』の5年も前に描かれていたのだ!!(笑)


 

 


 



 原作/青木健生、漫画/矢也晶久『つまみの酒肴』

単発の読切作品だが、こういうのをもっと読みたい!


料理監修/田上有香。酒と料理に関するウンチクがおそらく正確。


 富沢順『野良麺』

「のらめん」と読みます。


元気のある漫画です。


 加藤唯史『グルメ探偵りょうじ』

 作画が六田登っぽくもあり浦沢直樹的でもあり、そこが気になってしまう(笑)。嫌いではない。







■ 別冊漫画ゴラク7月号増刊 食漫 vol.2 平成21年7月20日発行

「B級グルメのA級漫画大量掲載!!」


 『極食キング』

 カラーページは料理等のグラビア(?)にあてがわれており、全号通して漫画でカラーなのは『極食キング』の扉絵のみである。

 今号から連載開始 原作/花形怜、劇画/吉開寛二『丼なモンダイ!』

『ラーメン発見伝』の丼版みたいな感じ?と言ったら怒られるか・・。


 『野良麺』より







■ 別冊漫画ゴラク8月号増刊 食漫 vol.3 平成21年8月20日発行

 キャッチフレーズに〈読後空腹注意必至〉が追加されました。以下ずっと、表紙は北方歳三がメインとなります。


 『極食キング』


 蜆庵スタッフ『蜆庵発 マエスチョロきくち まかない』

きくち正太登場!これは心強い。


 『野良麺』より

(スキャニングが下手なので、色合いが変です。)


 今号から連載開始 『なぎら健壱の好食一代男』

なぎらさん登場!これは心強い。


 今号から連載開始 『ジャイアント白田の串カツしろたや奮闘記』

自分のお店のPRコラム(笑)


 今号から連載開始 久住昌之『孤独の飲み飯』

久住昌之登場!これは心強い。







■ 別冊漫画ゴラク9月号増刊 食漫 vol.4 平成21年9月20日発行


 『極食キング』


 『野良麺』より







■ 別冊漫画ゴラク10月号増刊 食漫 vol.5 平成21年10月20日発行


 『極食キング』


 『野良麺』より







■ 別冊漫画ゴラク11月号増刊 食漫 vol.6 平成21年11月20日発行

 ヘッダーのキャッチフレーズが「激ウマ満腹グルメ漫画誌」となる。


 『極食キング』


 新連載 原作/白川晶、作画/渡瀬のぞみ『激辛クッキング』

激辛料理と極甘ラブコメが奇跡の融合。好きな作品です(笑)。

 


 

 


 


 『野良麺』より







■ 別冊漫画ゴラク12月号増刊 食漫 VOL.7 平成21年12月20日発行

ロゴのデザインが変わる。


 『極食キング』


 新連載 原作/五十子肇、作画/本庄敬『文士のお取り寄せ』

 単行本化の際は『文豪の食彩』にタイトルを変え、ドラマにもなった。じっくりゆったりとした造形で、雑誌全体に格調をもたらしています。


 『野良麺』より







■ 別冊漫画ゴラク1月号増刊 食漫 VOL.8 平成22年1月20日発行


 『極食キング』


 出た!新連載 泉昌之『食の軍師』シリーズ!!

 はっきり言って「食漫」イチの楽しみとなった作品。後に掲載誌を変え、泉昌之全作品の中でも息の長いシリーズとなった。

 







少なくとも初めのうちはメチャクチャ面白い(笑) 。


 細井ちえの小品。次々とシリーズを変えながらも常に雑誌に彩りを添えていた。

フツーに面白いし、安心して読める。


 『野良麺』より







■ 別冊漫画ゴラク2月号増刊 食漫 VOL.9 平成22年2月20日発行


 いつもカラーの扉だが、たまにカラーじゃないこともある。だが、必ず雑誌の最初の漫画は『極食キング』であった。


土山しげるの世界


 出た!泉昌之『食の軍師』シリーズ


どうでもいい細かいことを深掘りする

泉昌之の世界


 『野良麺』より



 新春企画:食漫旨いもの大放談!!
      ビッグ錠 × 土山しげる × ラズウェル細木 × ジャイアント白田

夢のような豪華な顔ぶれ

しっかしビッグ錠って、作品に出てくる自画像そのままだな。






■ 別冊漫画ゴラク3月号増刊 食漫 VOL.10 平成22年2月9日発行


 『極食キング』


 『野良麺』より







■ 別冊漫画ゴラク4月号増刊 食漫 VOL.11 平成22年3月10日発行

 巻頭はこのように、お店や料理の紹介がほとんどであった。

オムライスといえば「たいめいけん」


 『極食キング』


 新連載 むかいてっぺい『突撃取材!グルメ食べっぱなし』

 わずかな連載だったけど、こーゆー漫画がいいんだよ、こーゆーのが。


 『野良麺』より







■ 別冊漫画ゴラク5月号増刊 食漫 VOL.12 平成22年4月10日発行


 『極食キング』


 新連載 原作/ビッグ錠、漫画/橋本孤蔵『味師銀平 妖刀伝』


 『野良麺』より







■ 別冊漫画ゴラク6月号増刊 食漫 VOL.13 平成22年5月10日発行


 『極食キング』


 『野良麺』より







■ 別冊漫画ゴラク7月号増刊 食漫 VOL.14 平成22年6月10日発行


 『極食キング』


 新連載 後藤ユタカ『ふるさとグルメ日本征腹!!』

 まさかの、アンテナショップをリポートする漫画。この手があったか。こーゆーのでいいんだよ、こーゆーので。


 『野良麺』より







■ 別冊漫画ゴラク8月号増刊 食漫 VOL.15 平成22年7月8日発行


 『極食キング』


 新連載 いがらし惠『輝け シャイン食堂』

 まさかの、社員食堂をリポートする漫画。この手があったか。こーゆーのでいいんだよ、こーゆーので。


『野良麺』はお休みでした。






■ 別冊漫画ゴラク9月号増刊 食漫 VOL.16 平成22年8月10日発行


 『極食キング』


 『野良麺』より



 巻末カラーの企画は「納豆は混ぜれば混ぜるだけ美味しくなるのか!」。

 答えは、300回程度混ぜるのがベスト、とまとめられている。混ぜすぎてペースト状になってる写真も掲載されていた(笑)。






■ 別冊漫画ゴラク10月号増刊 食漫 VOL.17 平成22年9月10日発行


 『極食キング』


 『野良麺』より







■ 別冊漫画ゴラク11月号増刊 食漫 VOL.18 平成22年10月8日発行


 うえやまとち先生のB-1グランプリ・レポート


 かんけーないけど、やっぱ漫画家の自画像ってみんな実物によく似てるよなあ。


『野良麺』はお休み。






■ 別冊漫画ゴラク12月号増刊 食漫 VOL.19 平成22年11月10日発行


 『極食キング』


 『野良麺』より







■ 別冊漫画ゴラク1月号増刊 食漫 VOL.20 平成22年12月10日発行


 『食の軍師』シリーズ「弁当の軍師」より

崎陽軒のシウマイ弁当


シウマイ弁当をどのように食べ進めるかを考察

「かっこいいスキヤキ」と同じ手法ではある


 『野良麺』より


 あまりに唐突な、雑誌終了のお知らせ。

 「俺たちは箸をおさめない!まだ食いたいものがあるんだよ!!」
 「『休刊しないで!』との声、届いておりました。『どこにも売ってないよ!』の声も届いておりました。叱咤激励、ありがとうございました。冬の後には春が来ます。桜が咲く頃、お会いしましょう。」
 編集部の無念さのようなものが伝わってくる。

 毎月ささやかな楽しみとしていたので、たいへん残念であった。

 「来春『食漫』は生まれ変わります」
 「2011年新『食漫』に、ご期待ください!!」

 この言葉を信じてたが、うすらぼんやりと、間が空いちゃうと興味も冷めるかなとも思った。
 実際、本当にパワーアップリニューアルされたのか、確かめることも忘れてしまい、その暇もなくなってしまった。



 この時期、グルメ漫画も、だんだんコンビニコミックの方に移行していってたのかもしれない。


投稿者

エヌ氏

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